はのはのブログ 懐かしき日々

Yahoo!ブログでの2006年6月から2019年6月までの記憶

中里恒子の「時雨の記」を読みました。

 
3冊購入した恋愛小説の3冊目です。
 
40代の夫と死別した女性とイメージ 1
50代のバリバリ仕事をする会社社長。
多江と死別した夫は夫婦とはいっても
心の奥まで踏み込んだことのない夫婦だった。
それでも多江は結婚とはそういうものだとおもって過ごし、 
未亡人となっても誤解などされぬよう女ひとりで
つつましやかに生活をしたのでした。
20年ぶりの再会で、突然行動をおこした実業家の壬生。
会った翌日には多江の家に押しかけていく強引さで。
おどろきながらも家にいれる多江は 儚そうな女性なのに
どこか芯の強いところがある。
お茶をだして可愛らしさのまま相手はするものの
既然として 壬生の手にすぐおさまることもない。
壬生も強引にでるべきところは出るという男性だが
無理にどうこうする気はない。
ただ多江のそばにいたい同じ時を過ごしたい、
このままそばに置きたいとおもって行動する。
多江の家と社長室との専用電話をひき、毎日の定期的な電話でようすをうかがい
時間の許すかぎり呼び出し食事をともにしたり、家を訪れ静かに温かい時間を過ごす。
社長という常に気を張る重要職とこころの通じない妻のいる自宅では手に入れることができなかった
おだやかで自分自身をだせる場所をみつけたのだ。 
いずれふたりで過ごしたいというおもいが多江と共有できたものの、
壬生の心臓は長年の激務からの持病の発作が頻繁におきるようになっていた。
会社をうまく引き継がせるように着々と手はずを整え、
最後の仕事ということで3カ月かけ海外をまわる。
離れる3カ月は不安だがそれさえすめば壬生の考案した多江のための理想の家で余生を過ごす
という計画も内緒で進めていたのだった。
 
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壬生からの毎日の電話や海外のあらゆる都市からの多江をおもっての手紙が素敵でした。
こういうひと・・・知ってるぅ。意外と他にもいるものなのかとびっくりした。 
また多江という女性が古風というか可愛らしいひとで、彼女の壬生を慕いつつも頼り切らない
何も求めず出しゃばらず 自分の生活に壬生を受け入れるという女性。
つい共感していまい、あ~わたしは愛人向きの性格なのね・・・なんておもってしまいました。
多江は 初めて男性に強く求められるということで女性としての愛される喜びを知ったといえます。
多江をひとり寂しく死なせるものか最後は僕がみとるのだから、これからずっと僕が面倒みるんだって
そんなこといわれて多江にとってどんなに大きな存在だったでしょう。
だからこそ多江も、奥さんがいるし社会的にも重い立場にあるといえるひとなのだけれど
壬生のいわれるままについていこうとおもえたのでしょう。
ここまでお互い心を許しあって求めあっていたにもかかわらず、こころだけのプラトニック。
無理になんてこれからずっと一緒なのだから必要ない・・・といいつつ でも求める壬生と
多江の奥ゆかしさが 節度を重んじる大人を感じました
多江を閉口させ悩ませ、
壬生がなぜ多江のそばでしか自分をだせなかったのか納得させるような女性
壬生の妻、ああいうひとにだけはなりたくない(>_<)
 
心残りはあるものの、壬生の求めていた願いは叶ったといえます。
叶えてあげられたこと 多江も本望だったとおもいます。
ただこれから多江はどう生きていくのか・・・。
40代の最初で最後の恋(純愛)なんて潔すぎるけれど、
きっとそういうことになるのだろうと想像します。
 
これも素敵な作品でした☆